オレ節生活

気の向くまま、思いつくまま

藪原検校・見参!

おっと、本題。本日は『藪原検校』を観てきました。
作・井上ひさし、演出・蜷川幸雄、音楽・宇崎竜童。1973年初演作品。
意外!二代目藪原検校@古田新太さんは、もっと極悪非道な数奇の座頭って役柄だと思ってました。ところがどっこい、古田さんの愛嬌のあること!デカイ図体で何故か可愛い♪
正直、そんなに引き込まれてしまうような芝居ではなかった、と最初に言っておこう。前もって調べたら上演時間3時間10分(休憩含む)とな!保たなかったらどうしよう?という懸念が半分は当たった感じでした。ま、俳優祭で疲れて(気力が。体力は並んでいただけなので消耗してないと思われ。)いたせいもあるのでしょうが、中盤、ちょっとダレました
繰り返しになってしまうが、この公演を知ったのが、多分『朧の森に棲む鬼』観劇時に貰ったチラシだったので、今度は救いようのない醜悪な男を古田さんが?!そりゃ似合いすぎ?!(失礼な!)と思い込んでました。そしたら古田さん演じる・後に二代目藪原検校となる"杉の市"という人物がえらく愛嬌があって、キュート♪♪でビックリ。これが古田さんの持つ魅力/造形なのか、原作がそう描かれてるのかは分かりませんが。確かに人は殺すし女は犯すし、非道なヤツなんですが、そこの描写が短いせいか、はたまた古田さんの稚気のせいかあんまり酷いことをやってるように感じない…。(それ、いいのか?)特に誤って母殺しをしてしまう場面なんて、切なくて涙を誘ったわよ。つまり、好んで堕ちた道じゃない、目が見えない座頭が自由に生きる為に権力(カネ)を得ようとした訳で。後半にライバルのような存在で現れる、健常者以上の知性と品性で障害者としての自分・世界を守ろうとした保己市@段田安則さんと、結局目的は同じだったんだろうと。人々の心に潜む差別という悪意に打ち勝とうとした人間の物語、とも言えるような真っ当さも感じつつ……でもそんな風に思ってしまうのも何だかシャクなのでした(何で?)。だって"悪党"ってそれだけで魅力的だから、そんな「真っ当さ」の微塵もない芝居が観たくもあったんだよな〜なんて、思ったりしたのでした。
しかしまぁ、『朧』のマダレの時は、デブちんなオッサンにも見えたりしましたが(あっ、正直者っ)、座頭に定められた浅黄色の木綿の着流しで、『朧』の時よりずっと痩せて、背はあるし脚は長いし、剃り上げた頭に熱演の為か色白肌が紅潮して、ニッと笑う古田さんは……なんかカワユイ♪♪男に見えてしまうであった!ひゃ、ひゃぁーー(>_<)♪♪明らかにカワイコぶった演技もしてますけどね(笑)。
と、古田さんの事ばかりになってしまった。ま、私にとってはそれがメインディッシュですから(笑)。古田さんと、語り部役の座頭:壌晴彦さん、あと田中裕子さんも、かな?それ以外の7名(段田安則六平直政山本龍二松田洋治・梅沢昌代・神保共子・景山仁美/敬称略)は二役三役当たり前な早替わりっぷりでした。本当に10名の役者のみで構成された舞台なのね!それぞれの演技の幅に感心。段田さん演じる保己市の、薮原検校に対する愛着と嫉妬のような思いを感じさせるのは、さすがだな〜ではあるんですが、それよりも松田洋治くんが気になる私でした。昔、多分大河ドラマだったと思うけど、まだ10代(多分)の若かりし松田くんは鼻水を垂らしながら泣きの演技をしていて、それがすごく印象に残っているのだった。もう何のドラマか何の役か忘れてしまっているのに松田くんの鼻水入り涙だけは忘れないんだから不思議だ。童顔に凄みをきかせたメイクがマジちょっと怖かった。
語り部の壌さんは、声の良さと安定感でキュッと締める。義太夫節をちょっとだけ聴かせる箇所があるのだけど、上手いな〜〜と思ってたら、狂言の大家(?)に師事したとプロフィールの書かれてるチラシがたまたま貰った束の中に入っていて、なるほど、だからこの声の良さと語りか、と思ったのでした。そうそう、古田さんも早物語を語る場面があるのだけど、確かに内容は面白くて、間違えもつっかえもしない語り口には本当に感心したけど、あんまり上手いとは…思わなかったな。田中裕子さんは何か勿体ない遣い方だった。色っぽかったけど。きっと古チンがまた喜んだ事だろう(笑)。音楽は赤崎郁洋氏によるギター1本の生演奏のみ。幕開けの、三味線のようにも聞こえ、フラメンコギターのようでもあった演奏が高揚感を誘いましたね。ぼんやりと薄暗がりに浮かぶ照明も一段と効果的で。舞台はシンプル。歌舞伎の背景で使われるような松の木が1本。必要になる時まで裏返して置かれている。足元は碁盤の目のように張り巡らせた綱。必要に応じて広くなったり細くなったり。あとは細いビームを当てた照明。壁は一面木戸(雨戸)で覆われているが、時々ずれたりしてそこから光が。『ひばり』でも思ったけど、蜷川さんて後ろからの照明が漏れて細い光の筋(ビーム)になっているのが好きなのね。今回は客席通路は使用せず、ちゃんと(?)ステージ上だけで展開するお芝居でした(笑)。

結局、長い感想になりました(汗)。